カップ酒の販売コンセプト
●カップ酒の思い出。
私が父の後を継いで酒屋の仕事を始めた時、夕方、5時過ぎになると現れる集団がありました。そう、仕事を終えた建設関係の現場で働く男達です。
彼らが手にとって買う酒はカップ酒。
会計が終わると同時にフタを開けてその場で飲み始めます。
飲み終わったカップをカウンターの上において「おおきに」と一言残し帰っていきます。酒のうんちくなど垂れたりしません。
一度顔を出すと、その日から毎日のように顔を表すようになるのですが、それもよく続いて数ヶ月。
工事が終わると彼らは何処か別の土地に行ってしまうようです。
カップ酒とは、どの土地に行っても概ねこのような飲まれ方をされてきているお酒ではないでしょうか?
海外旅行などに行くと、現地の人がバーで日常酒を飲んでいるごく自然な光景でも、我々からは新鮮に見える事があります。恐らく大した酒は飲んでいないはずです。けど何故か美味しそうに思えてしまうのです。
●カップ酒は普通酒の方が旨い?
昨今のカップ酒ブームで、純米吟醸といった特定名称酒のカップ酒が現れました。
ちゃんとした日本酒が好きな方にとっては有り難いと思っている方も多いでしょう。
しかし実際にカップ酒を口にすると、純米吟醸や特別純米といった特定名称酒より普通酒クラスのお酒の方が旨く感じられる場面が多々あるのです。
それはカップ酒を口にするシチュエーションが影響しているようです。
カップ酒を口にするシチュエーションを想像してみて下さい。
ガード下の屋台の焼鳥屋。または酒屋の店先。
あるいは八代亜紀さんの演歌に出てくるような、灯りがぼんやり灯っている居酒屋でしょうか?
カップ酒のフタを開け、
口にそそいだその瞬間、
心はガード下の焼き鳥屋にでもいる気分になっているのです。
少しオヤジになった気分で。
普段ペンより重たい物をもった事がない人なのに、あたかも肉体労働者にでもなったような気分で飲むお酒なのです。
カップ酒を飲む時に舌は高級酒の味を求めていません。
なので普通酒のようなお酒の方が美味しく感じられるのではないでしょうか?
お酒の味は舌の上だけで評価されるものではありません。
いろんなシチュエーション、その場の空気、様々な要素が加わって、総合評価されるべきものです。
カップ酒はそういったものを教えてくれます。
●当店のカップ酒のコンセプト。
このカップ酒ブームにより、純米吟醸といった特定名称酒のカップ酒が脚光を浴びています。
しかし当店では基本カップ酒は「普通酒」だと考えています。
純米の方が優れている。より高いランクの特定名称の味を求めたい。酒質の優越を求めるのでしたら、1升ビンあるいは720mlビンに入った日本酒をお薦めします。
カップ酒は、その発生した背景から高級酒を入れる事を得意としません。火入れのクオリティー、フタの密閉度を考えますと「カップ酒に日本酒の味の神髄を求める」という楽しみ方はTPOが違う気がします。
特別ではなく日常酒として。少し不器用さを感じる地酒の味わい。
食の工業化によって味が均一化されてきた現代社会の中に、1本1本が違う味があってもいいのでは?そういう乗りでカップ酒をご紹介していきたいと考えています。
今、ホワイトカラーの都会人の間でカップ酒が注目されているのは、純米酒や吟醸酒などの特別な味を求めているからではありません。
旅に出ることで日常とは異なるチュエーションを求めるのと同様、日常生活の中でちょっとした変化を探していた時に、カップ酒という物がある事に気が付いたのではないでしょうか。
カップ酒を口にすることで、普段はペンより重たい物を持ったことがないのに肉体労働者になったような気分に浸ったり。まだオヤジという年でも無い若者がオヤジになったような気分を味わったり。或いは東京の洒落た店で飲んでいるのに、遠い田舎の酒屋で飲んでいるような気分になったり・・。
そういう日常生活の変化を求めるためのツールの1つがカップ酒なのです。

地酒・ネット販売担当 佐野 吾郎
昭和41年 大阪府枚方生まれる。
東京にてUNIX関係のソフトウェア開発に従事するものの、25の時に吟醸酒と運命的な出会いをし、サラリーマン生活にピリオドを打ち家業の酒屋を継ぐ。1996年ホームページを立ち上げ地酒通販を開始。
現在、日本酒専門店(JIZAKE.COM)、(HappyWine.COM)、そしてカップ酒専門店の3つのサイトを運営。
|